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会社契約の海外旅行保険、保険金は誰が受け取る?企業包括契約の正しい理解

「会社が保険の契約者になった場合、万が一の保険金は誰が受け取るのが正解?」そんな疑問を徹底解説。海外旅行保険の企業包括契約(包括旅行傷害保険)の仕組みや、管理部門が知っておくべき保険に関する情報を解説します。
「海外出張が発生するたび、従業員一人ひとりに保険の手続きを任せている」「企業包括契約の仕組みがいまいちわからない」「旅行保険のコストや工数を減らしたい」方は必見です。
目次
海外旅行保険の企業包括契約とは
海外旅行保険の「企業包括契約」とは、企業が契約者となり、役員や従業員を被保険者として一括で加入する契約方式です。
通常の旅行保険が「旅行のたびに、個人が申し込む」のに対し、包括契約は「会社が出張に基づいて申込みし、後で一括精算する」という形態です。これにより、出張者の業務負担を減らし、管理部門の精算工数を削減しつつ、旅行保険の加入ができます。
海外旅行保険の基本構造

法人として海外旅行保険を運用する場合、誰がどのような役割を持つのかを正しく理解しておく必要があります。まずは基本となる3者の関係性を整理しましょう。
保険の3者関係
法人契約の海外旅行保険では、以下の3者が登場します。それぞれの役割を明確にすることが管理の第一歩です。
- ● 契約者(会社):
保険料を支払い、保険契約を結ぶ主体です。法人契約の場合、会社が契約者となることで、保険料を福利厚生費や旅費交通費として経費計上することが可能になります。 - ● 被保険者(出張者):
実際に海外出張へ行き、保険の補償対象となる従業員のことです。出張中にケガや病気、携行品の盗難などのリスクを補償する対象となります。 - ● 受取人(ケースにより異なる):
保険金を受け取る権利を持つ人です。治療費や救援費用などは実費を支払った「会社」や「出張者本人」が受け取りますが、死亡保険金の場合は、あらかじめ指定された「法定相続人」などが受取人となります。
個人契約との違い
出張者が個別に加入する保険やクレジットカード付帯の保険と、法人契約には大きな違いがあります。
- ● 補償内容のカスタマイズと一元管理:
出張者がそれぞれ行う個人契約では補償内容がバラバラになりがちですが、法人契約なら全社員に一律で補償を適用できます。「誰が保険に入っているか分からない」という管理漏れを防げるのが最大のメリットです。 - ● 救援者費用の充実とキャッシュレス診療:
法人の海外出張では、現地でのトラブル時に会社からスタッフを派遣する費用(救援者費用)なども重要な補償となります。また、提携病院で自己負担なく受診できる「キャッシュレス診療」ができる保険会社を選べば万が一の時に出張者に高額な治療費を立て替えてもらう必要がありません。
保険金は誰が受け取るのか?ケース別に整理

「会社がお金を払って契約しているのだから、保険金は会社のもの」と考えがちですが、実際には保険の種類ごとに「最終的な受取人」が決まっています。ケース別に整理してみましょう。
死亡保険金
不幸にも社員が死亡した場合、保険会社から「死亡保険金」が支払われます。受取人は契約時に会社または法定相続人が選べますが、受取人が会社であってもこの保険金をそのまま自社の利益にすることはできません。会社は「窓口」として受け取り、弔慰金や退職金として遺族(受取人指定 または 法定相続人)へ支払うのが実務上の鉄則です。
例:死亡保険金 5,000万円の場合のお金の流れ
① 受取人が「会社」の場合
- 【1】 保険会社 → 会社
5,000万円が支払われる - 【2】 会社 → 遺族
全額を「弔慰金」等として支払う
② 受取人が「法定相続人」の場合
- 【1】 保険会社 → 遺族
5,000万円が直接支払われる
監修者:勝間
受取人が「会社」の場合でも受取人が「法定相続人」の場合でも、法定相続人へ「全額」支払いが必要です。保険金の一部を採用費などにあてて、残額だけを法定相続人に払うことはできません。
傷害・疾病治療費
海外でのケガや病気の治療費を補償するものです。基本的には、実際に治療を受けた「被保険者本人」が受取人となります。ただし、会社が治療費を全額立て替えた場合には、実費分を会社が受け取る運用が一般的です。また、キャッシュレス診療を利用した場合は、保険会社から病院へ直接支払われます。
携行品損害
出張中にカメラやパソコンなどの持ち物が盗まれたり、壊れたりした場合の補償です。持ち物の所有者である「被保険者本人」が保険金を受け取ります。会社支給のPCが破損した場合は、会社が受取人となるようあらかじめ設定しておくか、本人から会社へ実費を返還してもらう形になります。
賠償責任
ホテルの備品を壊した、他人にケガをさせたなど、法律上の賠償責任を負った際の補償です。形式上の受取人は被保険者本人ですが、実務では保険会社から被害者側へ直接賠償金が支払われることがほとんどです。これにより、社員が多額の賠償金を一時的に負担するリスクを防ぎます。
監修者
保険料を会社が負担していても、保険金の受取人は「事故に遭った人」が基本です。「会社が受け取る」のは、救援者費用の実費精算など、会社が直接的に支払った場合に限られることを覚えておきましょう。
なぜ会社契約でも本人受取になるのか
保険の性質
治療費などは実際に掛かった費用を埋め合わせる「損害填補」の性質を持ち、死亡保険金などはあらかじめ決まった額が支払われる「定額払い」の性質を持ちます。いずれも被害に遭った本人の損失をカバーすることが目的であるため、受取権は本人に帰属します。
従業員のリスクを補償する仕組み
海外出張という会社の業務命令に伴うリスクに対し、会社が保険という形で従業員を支える仕組みです。補償されるべきは、リスクを背負って渡航する従業員本人であるべき、という考え方が根底にあります。
法定上・法務上のリスク
本来、保険金は被保険者(従業員)の損失を補填するものです。会社が不当に利得を保持した場合、遺族から「本来受け取るべき権利」を侵害したとして訴訟を起こされるリスクが非常に高いです。
税務上のリスク
会社が保険料を経費(福利厚生費)として落としている場合、それは従業員のための支出であることが条件です。保険金を自社の利益にしてしまうと、経費性が否定され、法人税の追徴課税を受ける可能性があります。
倫理上の観点
従業員の命や怪我によって会社が「儲かる」仕組みは、安全配慮義務を負う企業として極めて不適切です。従業員やその家族との信頼関係を壊す行為となります。
海外旅行保険の企業包括契約のメリット

出張者にとってのメリット
- 立替不要: 保険料を個人で支払う必要がなく、経費精算の手間が省けます。
- 加入漏れ防止: 「うっかり忘れて無保険で渡航」という事態を物理的に回避できます。
管理部門にとってのメリット
- 安全管理の強化: 出張者に万が一の事故等が起きた場合、補償内容や現地のサポート体制を把握しているのですぐに対応ができます。
- 月毎の一括支払い: 出張ごとの細かい支払いがなくなり、月次で一括精算が可能です。
会社にとってのメリット
- 福利厚生としての位置付け: 会社が保険料を全額負担することは、給与以外に従業員へ提供される重要な「福利厚生」の一つです。万が一の際に本人や遺族にしっかりと保険金が届くことを担保することで、従業員が安心して業務を行うことができる環境を整えます。
- 法人税法上の「損金算入」: 会社が全出張者の保険料を負担している場合、その保険料は原則として「福利厚生費」として全額損金(経費)に算入できます。
遺族にとってのメリット
- 保険請求手続きの負担を軽減: 海外で死亡事故が起きた際、遺族はパニック状態にあることが多く、保険会社との複雑なやり取りや書類集めが大きな負担となります。 会社が受取人(窓口)になっていれば、会社が主体となって保険会社と手続きを進めることができます。
旅行保険の費用を抑えられる
損保ジャパンの例を見てみましょう。包括契約にすることで、都度加入よりも割引が適用されるケースが多く、コスト削減に繋がります。以下は割引の参考例です。
【割引シミュレーション】
補償内容: 傷害死亡3,000万、治療費300万、疾病死亡1,000万、賠償3,000万、携行品30万、救援費用300万
総保険料
1,378,000円
総保険料
814,000円
総保険料
623,600円
海外旅行保険の企業包括契約の手続きの流れ
ここからは実際に企業包括契約を考えている方に向けて、申し込みからの流れを具体的に見ていきましょう。※保険会社により実際の流れは異なります。
見積もり
まずは、自社の出張実態に合わせた最適なプランを算出するため、保険会社や代理店に見積もりを依頼します。包括契約は「年間の延べ出張人数」をベースに保険料が計算されるため、正確な出張実績データを用意することが重要です。
見積もりに必要な主なデータ
- ・過去1年間の海外出張実績(人数・渡航先・滞在日数)
- ・次年度の出張計画(拠点拡大やプロジェクトによる増減予測)
- ・希望する補償プラン(死亡保障額や治療費の限度額など)
契約
見積もり内容に合意した後、正式な契約手続きに進みます。企業が契約者となり、従業員を被保険者(保険の対象者)とする包括契約を締結します。
契約完了後の社内手続き
契約が成立すると、管理用のIDやパスワードが発行されます。また、社内規程(弔慰金規程など)の見直しを行い、従業員へ「今後は個人での保険加入が不要になる」旨をアナウンスします。
暫定保険料の支払い
包括契約では、契約開始時に「暫定保険料」を支払うのが一般的です。これは、まだ確定していない1年間の出張実績に対し、あらかじめ概算で保険料を預けておく仕組みです。1年間の契約期間が終了した際に、実際の出張実績に基づいて最終的な保険料との差額を精算します。
暫定保険料とは
一般的には年間予定保険料の1/12(月割り相当)を暫定保険料として設定し、契約終了時に実際の実績と照らし合わせて過不足を精算します。保険会社によっては出張実績が極端に少なかった場合でも、契約を維持するための「最低保険料(例:1,000円〜)」が設定されている場合があります。暫定保険料の算出基準や精算タイミング、最低保険料の有無などは保険会社やプランによって異なるため、契約時の確認が必要です。
出張者の登録
実際に従業員が出張へ行くたびに、その情報を保険会社へ登録します。氏名、渡航先、期間などの情報を入力することで、付保証明書(保険加入証明書)の発行が可能になります。
報告・精算
毎月の出張実績を確定させ、最終的な保険料の精算を行います。一般的には、前月分の実績を翌月の決まった期日までに保険会社へ報告します。
| 精算タイミング | 内容 |
|---|---|
| 毎月の精算 | 当月の実際の出張実績(確定人数・日数)をもとに支払いを行います。 |
| 年度末の精算 | 年間の総実績を確定。暫定保険料との差額を精算し、次年度の暫定額を設定します。 |
保険金実務でよくある論点・注意点

法人契約の海外旅行保険の実務において、管理部門が知っておくべき論点・注意点をあらかじめ押さえておきましょう。
受取人の誤認によるトラブル
「会社が契約者だから保険金はすべて会社の雑収入で処理できる」という誤解が、後に大きなトラブルを招きます。特に死亡保険金や後遺障害保険金において、会社が勝手に受領し、遺族や本人への支払いを遅延・過少にした場合、法的責任を問われるリスクがあります。あらかじめ「誰に支払われるべきものか」を規程で明確にすることが不可欠です。
会社が立替した場合の精算フロー
現地での治療費を会社カードや送金で立て替えた場合、保険金は「立て替えた実費分」に限り会社が受け取ることが可能です。この際、「会社が立て替えた証明」と「保険会社からの入金」を正しく紐付ける処理が必要になります。キャッシュレス診療を推奨することで、こうした複雑な精算事務そのものを回避するのも有効な手段です。
労災保険との関係
海外出張中の事故は、日本の労災保険の対象にもなり得ます。しかし、労災の手続きには時間がかかるうえ、海外の医療費を全額カバーできないケースも多いです。海外旅行保険は労災の上乗せ補償として機能するため、まずは海外旅行保険で迅速に治療を受けさせ、並行して労災の申請を検討するというのが良いでしょう。
税務上の扱い(福利厚生費)
会社が支払う保険料を非課税(福利厚生費)として処理するためには、「全出張者を対象に加入していること」が重要です。特定の役員だけを手厚くするような差別的な契約は、給与課税の対象とされる恐れがあります。また、受け取った保険金を遺族に支払う際の名称(弔慰金など)も、社内規程と整合性を取っておく必要があります。
監修者
実務において最も怖いのは「規程と保険の中身がズレていること」です。保険金は受け取った後の「出口」までを見据えた運用が必要です。不測の事態に「会社がどう動くか」を旅費規程や慶弔見舞金規程にしっかり反映させておくことが、担当者のリスクヘッジにもなります。
保険会社はどう選定する?
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ピカパカ出張DXの詳細はこちら監修者:勝間
『保険金は会社のもの?』という疑問は、実務上のコンプライアンスに関わる重要な点です。包括契約はメリットが多くありますので、正しい知識を持った保険代理店(パートナー)を選ぶことが大切です。
海外旅行保険の企業包括契約に関するよくある質問(FAQ)
Q. 保険金を会社が受け取ることはある?
A. 原則としてありませんが、例外はあります。
「救援者費用」など、会社が従業員の家族を現地に派遣するために支出した実費分などは、会社が受け取ることが可能です。
Q. 死亡保険金の受取人は指定できる?
A. 法人契約の種類によりますが、基本は「法定相続人」となります。
包括契約(全社員対象)の場合は個別の指定が難しく、法定相続人が受け取ることが一般的です。特定の役員などの契約であれば指定可能な場合もありますが、実務上は規程に「遺族へ支払う」旨を明記しておく対応が多く取られます。
Q. 海外駐在は対象になる?
A. 通常の「海外旅行保険」とは別の「海外赴任者保険」が必要になります。
短期出張を対象とした保険と、長期滞在の駐在員を対象とした保険では、リスクの考え方や補償範囲が異なります。駐在員を送り出す場合は、生活全般をカバーする駐在員専用プランへの加入を検討しましょう。
まとめ
海外旅行保険の企業包括契約は、コスト削減・事務効率化・リスク管理のすべてにおいて多くのメリットがあるため、出張が多い企業にはおすすめです。
ただし、会社が契約者であっても、受け取った保険金は最終的に従業員やその家族へ届けるべきものです。正しい知識とシステムを活用し、クリーンな出張管理体制を築いていきましょう。

