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海外出張における「安全配慮義務」とは?管理部門が守るべき範囲と具体的な対応策を解説

2026.02.20

「海外出張中の社員の現在地を即答できますか?」
『安全配慮義務』とは、会社が社員の命や健康を守るために尽くすべき法律上の責務のことで、何も対策を講じないまま出張中の社員がトラブルに遭った場合には、「管理不足」として責任を問われる恐れがあります。
本記事では、安全配慮義務とは一体何か、そして管理部門として具体的にどう動くべきかを分かりやすく解説します。

ピカパカ出張DXコラム執筆者中村

この記事の執筆者

編集部 中村

旅行業界歴15年以上。自身の国内、海外出張経験を生かして記事を執筆しています。旅行業務取扱管理者資格保持者。

ピカパカ出張DXコラム監修者勝間隆人

監修者

勝間 隆人 (株式会社ピカパカ 執行役員、法人DX推進事業部 部長)

出張管理(BTM)分野で20年以上の経験を持ち、累計400社以上のコスト適正化を支援してきた専門家が監修、解説します。

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、企業が従業員を労働させる際、「心身の安全と健康を確保できるよう、必要な配慮を尽くす義務」です。出張中という会社の管理が届きにくい場所であっても、この義務は免除されません。

労働契約法 第5条(引用)

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

引用:厚生労働省 労働契約法について

安全配慮義務に違反した場合の罰則

もし安全配慮義務を怠り、出張中の社員が事故や過労死に遭った場合、会社は様々なペナルティを負うことになります。

  • 民法第415条(債務不履行責任):安全を守るという契約上の義務を果たさなかったとして、損害賠償請求を受ける可能性があります。
  • 民法第709条(不法行為責任):会社側に過失があった場合、被害者(または遺族)に対する不法行為として損害賠償義務が発生します。
  • 刑事罰(業務上過失致死傷罪):極めて悪質な安全管理の欠如があった場合、代表者や管理担当者が刑罰に問われるリスクもゼロではありません。
  • 送検および公表:労働基準法違反等で書類送検された場合、厚生労働省のHPで企業名が公表され、社会的信用を完全に失います。

参考:デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法

参考:デジタル庁 e-Gov 法令検索 労働契約法

監修者

監修者

「うちの会社は大丈夫」という根拠のない過信が、後に数億円の賠償判決を招く事例も増えています。法的な根拠に基づいた規程作りが、会社を守る手段となります。

安全配慮義務の具体的な範囲

管理者が守るべき範囲は、身体的な事故から精神的な問題まで多岐にわたります。

身体的リスク:事故・災害・犯罪からの保護

移動中の交通事故、建設現場等での労働災害、渡航先での感染症やテロなどです。「予見できる危険」に対して、会社が何らかの指示や対策を講じていたかが焦点となります。

精神的リスク:環境変化と過重労働の抑制

出張特有の「慣れない環境」や「時差」による心身への負荷です。弾丸出張などの過密スケジュールにより心疾患やメンタル不調を招いた場合、過労死ラインを超えていなくとも、義務違反を問われるケースがあります。

対象:非正規雇用者を含む全労働者

正社員だけでなく、期間契約社員やパート、アルバイトも同様です。また、下請け企業の社員に対して直接指揮を執る場合には、その社員に対しても義務を負うことがあります。

海外出張時に想定される主なトラブル

海外出張には、国内勤務では想像もしないような多様なリスクが潜んでいます。管理部門は、以下のようなトラブルが「自社の社員にも起こり得る」という前提に立ち、事前の対策と規程の整備を進めなければなりません。

リスク類型 管理部門が想定すべき事例
治安・重大犯罪
  • 強盗・窃盗被害:
  • 親切を装い話しかけ、油断した隙に荷物を奪うなどの被害は「社員の不注意」で片付けられがちですが、事前にこうした「出張地で頻発する犯罪手口」の情報共有を行っていなかった場合、企業の周知義務違反を問われる可能性があります。

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  • テロ・暴動:
  • 現地の政情不安から発生した暴動により、社員に身の危険が起こるケースです。会社側が「外務省の危険情報をリアルタイムで把握し、渡航中止や早期退避の指示を適切に出していたか」が問われます。
医療・健康被害
  • 高額医療費:
  • 海外では簡単な治療や診察でも高額な医療費を請求されることがあります。治療費用の限度額が低い安価な保険しか掛けてない、渡航先の衛生状況や、信頼できる病院リストを事前に提供していないなど「社員の生命を守るための体制が整っていたか」という企業の姿勢が問われます。
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  • 身体的・精神的不調:
  • 社員から「眠れない」「体調が優れない」という報告があったにもかかわらず、業務を継続させた、あるいは早期帰国の判断を下さなかったなど心身の回復機会を奪った場合に責任を問われます。
勤務環境
  • 宿泊先の事故:
  • 「とにかく安く」と選ばせたホテルでの犯罪被害。「危険が予測される地域で、防犯体制の整ったホテルを選択させなかった」という企業の選定ミスが指摘されます。
監修者

監修者

「うちの社員は海外慣れしているから」という油断が一番危険です。外務省が公開している事例集などを活用し、『実際に起きた他社の失敗』から学ぶことが管理部門の最初の一歩になります。

参考:外務省 海外安全パンフレット・資料

海外出張者に企業がすべき安全配慮の対応

管理部門は「規程」というルール作りと、「支援」という実務の両面から対応が必要です。

出発前にできること

  • 外務省情報の確認:危険レベルに応じた「渡航禁止・自粛」の基準を旅費規程に明記。

    参考:外務省 国・地域別安全情報

  • 「たびレジ」登録の義務化:現地の最新緊急ニュースを社員に届ける。

    参考:外務省 たびレジ

  • 海外旅行保険の付保:無制限の治療費用など、補償が充実した保険プランの選定。
  • 事前ガイダンスの実施:現地の禁忌事項や緊急連絡先の周知徹底。

出張中にできること

  • 所在把握システムの稼働:いつ、どのホテルに滞在しているかを瞬時に確認できる体制。
  • 緊急ホットラインの設置:24時間365日繋がる相談窓口の提供。
  • 安否確認システムの設定:危険が発生した際に即座に安否確認できる体制構築。

帰国後にできること

  • メンタルチェックの実施:特に過酷な環境(新興国や紛争リスク地域)からの帰還者。
  • トラブルレポートの提出:次にその地へ行く社員への貴重な安全データとして共有。

出張の安全危機管理に出張管理システムの導入がおすすめ

安全配慮義務を果たす上で、管理部門が最も恐れるべきは「社員が今、どこで何をしているか把握できていない状態」です。社員が各サイトでバラバラに予約を行っている状況では、テロや自然災害が起きた際、即座に安否確認を行うことが物理的に不可能です。

この「情報の分断」を解消し、管理者の責任を全うするためには、予約データの一元管理(出張管理システムの導入)が不可欠です。安全危機管理の体制を整える要素の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

「誰が・どこに」を一瞬で特定できる体制の構築

出張管理システムを導入すると、すべての予約データがリアルタイムで一つの画面に集約されます。

  • 所在把握:フライト、宿泊、レンタカーまで社員の予約内容がデータで見れるので、「特定の地域」に滞在中の社員をリストアップしたり、有事の際は早い初動対応が期待できます。
  • 義務遂行の証拠(エビデンス):「会社が全出張者の動静を常に把握できる体制を整えていた」という事実そのものが、万が一の際の安全配慮義務における免責材料となります。
監修者

監修者

危機が起きてから「どこにいる?」と聞き回るのは、管理者の過失を証明しているようなものです。『最初からわかっている状態』を作ること。これこそが、システムを使った現代の安全配慮の極意です。

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出張時の安全配慮義務に関するよくある質問

Q. 「たびレジ」や海外旅行保険への登録は社員任せでいいですか?

A. 「登録を推奨した」だけでは不十分とされるリスクがあります。旅費規程に登録を義務付け、管理部門で登録完了を確認するフローが望ましいです。

Q. 労災保険があれば民事訴訟は防げますか?

A. 防げません。労災はあくまで国が補償する最低限のものです。それだけでは足りない損害(慰謝料等)について、会社に対して訴訟が起こされます。

Q. 感染症の流行国への出張を命じ、社員が感染したら?

A. 流行状況を把握した上で、適切な予防手段(予防接種等)を講じさせず、かつ代替手段(Web会議等)を検討しなかった場合は、高い確率で義務違反となります。

Q. 社員が「安さ」を優先して治安の悪いエリアのホテルを自分で予約した場合、会社に責任はありますか?

A. 責任を問われる可能性が高いです。「社員が勝手に選んだ」としても、会社が宿泊先の選定基準(安全基準)を明示せず、個人の判断に委ねていたことが「管理不足」とみなされます。ルールの明示や出張規程を定めて、会社が認めた安全なホテルのみを予約させる仕組み作りが必要です。

Q. 災害やテロなど、会社にはどうしようもない「不可抗力」の事態でも義務違反になりますか?

A. 事態そのものは防げなくても、「発生時に社員の居場所を把握できていなかったこと」や「救助の初動が遅れたこと」が義務違反になります。やるべき対策(所在把握や連絡体制の構築)を尽くして初めて、会社は免責の土俵に立つことができます。

Q. 海外出張の「移動時間」に起きたトラブルも、安全配慮義務の対象ですか?

A. はい、対象です。移動時間は労働時間には含まれない場合が多いですが、業務に伴う移動である以上、会社はその安全を確保する義務を負います。移動手段の指定や、長距離移動後の十分な休息時間の確保を規程化することが重要です。

まとめ

海外出張における安全配慮義務を果たすことは、単に従業員個人の注意に頼るのではなく、組織として「リスクを予測し、防ぐ仕組み」を構築することが重要です。管理部門は、万が一の事態が起きた際に「会社として最善を尽くしていた」と証明できるようにしましょう。

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