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長期出張の規定とは?日当や宿泊費の取り扱いと節税・コスト抑制のポイント

長期出張は、通常の出張に比べて宿泊費や日当の総額がかさみ企業の費用負担が大きいものです。適切な規定がないと思わぬ課税リスクを招くこともあります。 本記事では、長期出張の定義から、節税効果を見込む長期出張旅費規程のポイント、さらには具体的な日当減額率の実例まで詳しく解説します。 「長期出張のルールをどう決めるべきか悩んでいる」「現在の運用が正しいか不安」という経理・総務担当者の方は、ぜひ規程作成の参考にしてください。
目次
長期出張とは?転勤と何が違う?
長期間、現在の勤務地を離れて業務に従事する場合、それが「長期出張」にあたるのか、あるいは「転勤」にあたるのかによって、会社が負担すべき経費の扱いや税務上の処理が大きく異なります。まずは両者の定義と違いを正しく理解しておく必要があります。
「長期出張」とは
長期出張とは、特定のプロジェクトや業務、作業といった明確な目的のために、一時的に遠方の拠点や現場へ赴き業務を行うことを指します。あくまで「一時的」な拠点移動であり、業務終了後は元の勤務地に戻ることが前提となっています。
この場合、生活の基盤は元の自宅にあると考えられ旅費実費の補填として手当は日当、宿泊費、交通費などが支給されます。
「転勤」とは
一方で転勤とは、人事異動によって勤務地が長期的に変更され、それに伴って居住地(生活の拠点)そのものを移転させることを指します。長期出張が「一時的な滞在」であるのに対し、転勤は「生活基盤そのものの移動」を伴うのが大きな違いです。
転勤の場合、新しい赴任地での生活をサポートする目的で、転勤手当(赴任手当)、住宅手当、引越費用などが支給されるのが一般的です。
監修者:勝間
実態として1年以上同じ場所に滞在し、生活の拠点がそこにあるとみなされると、税務署から「それは出張ではなく転勤(転居)ではないか」と指摘されることがあります。その場合、支払っていた日当が「実質的な給与」と判断され、遡って課税対象になるリスクがありますので正確に区分けする必要があります。
長期出張の規定に入れるべき4つの重要項目
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①滞在期間に応じた「日当の減額規定」
長期出張において最も 一般的かつ効果的なコスト抑制策が、「日当の段階的減額」 です。同一地に長期間滞在する場合、出張者は現地の生活環境に慣れ、スーパーの利用、自炊などが可能になります。これにより、短期出張時に比べて「出張に伴う諸雑費」が抑えられるという考えに基づき、 多くの企業が滞在日数に応じた日当の減額ルールを採用しています。
また、この減額規定を設けることは、税務面においても「日当が実費を補填する性質のものである」という根拠となり、税務調査時に給与課税とみなされるリスクを低減する効果もあります。企業のコスト意識を反映しつつ、出張者の納得感も得られるバランスの良い比率(10%〜40%程度の減額)を設定することが重要です。
規定例:
・同一地への滞在期間が30日を超える場合、31日目以降の日当は所定額の80%を支給する。
・宿泊を伴う長期出張において、滞在が60日を超える場合は、61日目以降の日当を所定額の60%まで減額する。
②宿泊施設の切り替え
長期滞在において、宿泊コストを削減する鍵となるのが「宿泊施設の見直し」です。一般的なビジネスホテルに連泊し続けると、観光シーズンの価格高騰の影響を受けやすい特徴があります。一方で、マンスリーマンションや法人契約の宿泊施設を活用すれば、一泊あたりの単価を抑えることが可能です。
また、これらの施設はキッチンや洗濯機が完備されているケースが多く、自炊が可能になれば、出張者の食費負担を軽減できるというメリットもあります。一定期間以上の滞在が決まっている場合には、 規定で宿泊形態の切り替えを促す仕組みを作る ことが推奨されます。
規定例:
・「30日以上の滞在が見込まれる場合は、原則としてホテルではなくマンスリーマンション等を利用するものとする」
・「長期滞在用の施設を利用した場合は、宿泊料の実費に加え、光熱費等の諸経費を会社が負担する」
③一時帰宅の費用負担
長期出張により長期間自宅を離れることは、従業員の精神面や家庭環境に大きな影響を与えます。そのため、長期出張中に週末などを利用して自宅へ戻る際の交通費を会社がどこまで負担するか、あらかじめルール化しておくことが不可欠です。この規定が不明確だと、不公平感が生じたり、従業員が過度な自費負担を強いられたりする原因になります。
帰省の頻度(例:月に1回、隔週など)や、支給の対象となる範囲(交通費のみか、日当も含むか)を具体的に定めておくことで、 従業員がリフレッシュしながら長期プロジェクトに専念できる環境を整える ことができます。
規定例:
・「出張期間が1ヶ月を超える場合、1ヶ月につき1回、自宅への往復交通費(実費)を会社負担とする」
・「一時帰宅中の宿泊料および日当は支給しない」
④荷物運送費・諸手当
数ヶ月に及ぶ出張では、衣類や日用品といった身の回り品の量も多くなります。これらを移動時にすべて手荷物として持ち運ぶのは現実的ではないため、宅急便等を利用した輸送費の負担ルールを定めます。また、生活拠点が一時的に変わることへの「準備」として、一時金(支度金)を支給するケースもあります。
環境の変化に伴う心理的・経済的負担を考慮した「諸手当」を明らかにしておく ことで、従業員の満足度向上を図ることができます。
規定例:
・「長期出張の開始および終了時における私物の輸送費(片道3,000円まで等)を会社負担とする」
・「3ヶ月以上の長期出張に際しては、準備費用として一律〇〇円の長期出張支度金を支給する」
監修者:勝間
経費を削減しつつ、支給額が少額であっても従業員の満足度を上げることができる規程を作ると良いでしょう。従業員にが安心して長期出張に臨める環境を作ることが大切です。
長期出張規程の節税効果
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長期出張規定を整備し、適切に運用することは、単なるコスト管理に留まらず、会社・従業員の双方にとって非常に高い節税メリットをもたらします。ここでは、会社側・従業員側が得られる具体的な節税メリットをまとめて解説します。
会社側の節税メリット:社会保険料と法人税の削減
長期滞在に伴う費用を「給与」として上乗せ支給してしまうと、所得税や社会保険料の負担が増してしまいますが、規程に基づいた「旅費(日当)」として支給することで、これらの税負担を合理的に抑えることが可能です。
社会保険料が対象外
給与を増やすと、会社が折半で負担する社会保険料(健康保険・厚生年金など)も増額されます。しかし、規程に基づいた「旅費(日当)」は実費精算の代わりとみなされるため、社会保険料の算定基礎に含まれません。長期出張で 毎月数万円の日当が発生しても、会社側の社保負担は増えません。
全額を損金(経費)として算入可能
適正な額の日当は、全額を「旅費交通費」として損金算入できます。これにより、法人税の課税対象となる利益を少なくし、法人税の節税になります。
消費税の仕入税額控除
日当は、消費税法上「課税仕入れ」として扱われます。支払った日当に含まれる消費税相当分を、会社が納めるべき消費税から差し引くことができるため、消費税の節税にもなります。
従業員側の節税メリット:所得税・住民税が「非課税」
従業員にとって、日当は「業務遂行に必要な経費の補填」という扱いになるため、実質的な収入増でありながら「税金がかからない」というメリットがあります。
所得税・住民税が0円
通常、残業代や各種手当を1万円増額すると、そこから所得税や住民税、社会保険料が差し引かれ、実際の手取りは7〜8割程度に目減りしてしまいます。しかし、 非課税枠内の「日当」であれば、1万円支給されれば1万円がそのまま個人の手元に残ります 。
実質的な手取りアップ
長期出張では、宿泊費は原則として会社が全額負担します。そのため、自宅で発生するはずだった光熱費や水道代などの生活維持費を一時的に抑えることが可能です。これに加えて非課税の日当が支給されることで、出張期間中の家計支出が実質的に減少し、結果として手元資金を増やす効果が得られます。
税務署に否認されないための「長期出張規程」のポイント
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「長期減額規定」をつける
「30日を超えたら日当を20%減らす」といった減額規定を設けておくことで、「実費の補填である」という説得力が増し、税務調査での否認リスクを下げられます。
「通常必要と認められる範囲」にする
日当が月額数十万円など、相場から著しく高額な場合は「報酬」や「給与」とみなされ、源泉徴収漏れを指摘される可能性があります。財務省の調査にある「日当2,600円前後」という平均値を一つの指標にしつつ、実態に合わせた設定が必要です。
出張報告書との整合性
「実際には出張していないのに日当だけ払う」のは架空経費となります。長期出張の場合も、定期的な業務報告書を作成し、勤務の実態を証拠として残しておくことが不可欠です。
長期出張中の食費や光熱費、交通費は会社負担?

長期出張中の費用負担については、基本的には「業務に必要なものは会社負担」で、それ以外の「個人的な生活にかかわるものは日当で補填(個人負担)」という考え方がベースになります。しかし、滞在が数ヶ月に及ぶと、光熱費や食費の境界線が曖昧になりやすいため、規定で明確に切り分けておく必要があります。
食費
財務省の調査結果によると、出張中の食事代については、約9割の企業が別途支給は行わず、 支給される「日当」の中から本人が自己負担する 形をとっています。長期出張の場合、マンスリーマンション等での自炊が可能になることで、短期出張よりも食事代を抑えられるケースもありますが、基本的には日当の範囲内でやりくりするのが一般的です。
【財務省アンケートに見る食事代の支給実態】
- 国内出張: 朝食・昼食・夕食ともに「支給しない」とする企業が約90%に達します。これは、日当が食事代を兼ねているという解釈が一般的だからです。
- 海外出張: 81.1%の企業が食事代を別途支給していません。渡航先での物価高騰は日当の金額設定で調整されます。
- 支給額: 食事代が別途支給される場合の平均額は、国内夕食代で1,305円、海外では1日あたり約2,839円(円建ての場合)程度です。
交通費
出張先への赴任・帰任時の移動費用、および現地での業務遂行に伴う交通費は、原則として会社が全額実費を負担します。ただし、 休日の個人的な外出や観光に伴う交通費は対象外 です。長期出張特有の費用として、「一時帰宅時の往復交通費」を月1回程度認める規定を設ける企業も多いですが、これも会社負担とする場合は規定への明記が必須です。
光熱費(長期滞在時)
長期出張でホテルではなくウィークリーマンションやマンスリーマンションを利用する場合、 光熱費の扱いは宿泊料の規定に含まれることが多い です。多くのマンスリーマンションでは「光熱費込み」のパック料金設定になっていますが、個別契約が必要な場合は、上限を設けた上で会社負担(宿泊費の一部)として処理するのがスムーズです。インターネット利用料についても、業務で必要な場合は会社負担とするのが通例です。
監修者:勝間
「食費が足りない」という不満が出張者から出た場合は、食事代を別途支給するのではなく、「長期出張手当」や「支度金」の枠組みを検討することで、事務処理を煩雑にせず対応することが可能です。
【参考】長期出張の定義と日当の減額率の実例
ここからは実際の企業の実例を元に、長期出張は何日からか、日当の何パーセント減にしているかを見ていきましょう。
NPO法人地球と未来の環境基金
同一地に引き続き15日以上宿泊する場合を長期出張とし、15日目から日当は所定の60%とする。(第21条2項記載)
参考:NPO法人地球と未来の環境基金 出張旅費規程
株式会社クラッソーネ
勤務地以外の市区町村に出向き、宿泊を必要とする期間が20日を超えるもの(第2条2項記載)
宿泊費:月当たり税込120,000円を上限とする宿泊費実費(第3条1項記載)
日当:長期出張時の日当は一日当たり2,000円とする。(第3条1項記載)
参考:株式会社クラッソーネ 出張旅費規程
一般財団法人Rubyアソシエーション
出発した日から数えて20日間は宿泊出張と同様の日当および宿泊費を支給し、20日を超える分についてはその80%を支給する。(第20条1項記載)
参考:一般財団法人Rubyアソシエーション 出張旅費規程
三宅建設株式会社
滞在期間が 31 日を超える宿泊出張を長期出張という。(第4条2項記載)
参考:三宅建設株式会社 旅費規程
期出張に関するよくある質問
長期出張の運用にあたって、多くの担当者が悩む「期間」や「税務上のルール」について、Q&A形式で解説します。
Q. 長期出張の基準は?
長期出張とは、所属部署や労働条件を変更せず、特定のプロジェクトや応援業務などのために一時的に遠方の拠点へ赴くことを指します。実務上の判断基準は、「生活の拠点が現在の自宅にあるか」、そして「業務終了後に元の勤務地へ戻る予定があるか」の2点です。人事異動を伴う「転勤(赴任)」と異なり、あくまで一時的な拠点移動であることを旅費規程に明記しておく必要があります。
Q. 長期出張はどのくらいの期間ですか?
多くの企業では、「1ヶ月以上」の滞在を長期出張と定義するケースが一般的です。ただし、業務内容によっては「1週間以上」や「2週間以上」から通常と異なる精算ルール(日当の減額や宿泊先の指定など)を適用する場合もあります。自社の出張頻度やコストの実態に合わせて、何日目からを「長期」とするか規定することが推奨されます。
Q. 出張の期間に上限はありますか?
法律上の明確な上限日数はありませんが、税務・実務上の観点から「1年未満」を目安とするのが通例です。同一地での滞在が1年を超えると、生活の拠点がそこに移ったとみなされ、税務署から「出張ではなく転勤」と判断されるリスクが高まります。その場合、支払っていた日当などが給与として課税対象になる恐れがあるため、超長期になる場合は「転勤」への切り替えを検討すべきです。
Q. 海外出張の「183日ルール」とは何ですか?
183日ルールとは、租税条約に基づき、海外出張先での滞在日数が年間で合計183日(約半年)を超えない場合、現地での所得税を免除し、日本でのみ課税するというルールです。もし滞在が183日を超えると、出張先の国でも納税義務が発生し、二重課税や複雑な確定申告の手続きが必要になるため、海外プロジェクトの管理において重要です。
長期出張の管理を効率化する「ピカパカ出張DX」
長期出張は、通常の出張に比べて「滞在期間の長さ」ゆえに管理が複雑化しがちです。特に、長期減額規定の適用や、安価でかつ利便性の良いホテルの比較検討、膨大な領収書の処理など、経理・総務担当者の負担は多くなります。こうした課題をデジタル化によって一掃するのが「ピカパカ出張DX」です。
規定に沿った予約ができる
長期出張において最も懸念されるのが、社内規定に沿わない高額な宿泊予約です。「ピカパカ出張DX」では、 あらかじめ設定した自社の旅費規定に基づいたホテルのみを予約画面に表示 させることができます。上限額を超えるホテルを選択できないように制御できるため、予約後の差し戻しや事後チェックの手間がゼロになります。
一括請求で立替を解消
長期滞在になると宿泊費が数十万円に達することも珍しくありません。 「ピカパカ出張DX」なら会社への一括請求が可能 なため、社員の多額な立替払いを解消します。
担当者の工数を大幅削減
手動での精算業務は、長期出張者が増えるほどに工数が増えます。システムを導入することで、 予約データがそのまま精算データとして連携される ため、入力ミスや不正申請のリスクを最小限に抑えることができます。
出張情報の見える化
出張データの見える化により、 誰が・どこに・いつまで滞在しているかをリアルタイムで把握可能 になります。これまでエクセル管理や紙の申請書に費やしていた時間をなくし効率化することができます。
まとめ
長期出張は、通常の出張以上に「コスト管理」と「運用の透明性」が問われます。適切な対応をしないと、企業の経理負担が増大するだけでなく、思わぬ税務リスクを招いたり、従業員の不満につながったりする恐れがあります。「規定の整備」と「システムの活用」をセットで検討し効率化と企業の生産性を上げていきましょう。

