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出張中のケガや病気はどこまで労災?認定基準と事例、手続きの流れを徹底解説

「出張中に事故に遭ったらどうなる?」「移動中やホテルでのケガは労災になるの?」
出張は通常の勤務とは異なり、どこまでが労災保険の対象になるのか判断に迷う方は非常に多いです。本記事では、労災認定の基本的な考え方から、認められるケース・認められないケースの具体的な事例、万が一事故が起きた際の手続きの流れまでを解説します。出張を控える従業員の方はもちろん、安全管理を担う管理部門の方も、ぜひ参考にしてください。
目次
出張中のケガや病気は労災保険の対象?

結論から言うと、出張中のケガや病気は、原則として労災保険の対象となります。
出張中は、移動や宿泊も含めて「業務を遂行するためのプロセス」と考えられます。そのため業務時間以外の移動中や宿泊中であっても、業務に関連する範囲内であれば「業務災害」として労災が認定されるのが一般的です。
労災と認められるケース
- 1. 移動中の事故:出張のため、自宅から新幹線の駅へ向かう途中で転倒し骨折した。
- 2. 宿泊中の事故:宿泊先のホテルで、就寝中に火災が発生し火傷を負った。
- 3. 食事中の事故:出張先で通常利用する食堂で食事をしていた際、食中毒にかかった。
労災保険から給付される主な内容
労災として認められた場合、被災した従業員やその遺族に対して、以下のような給付(サポート)が行われます。治療費だけでなく、生活を支えるための幅広い補償があります。
| 給付の種類 | 内容 |
|---|---|
| 治療費が無料になる (療養給付) |
病院での治療や薬代、手術費用などが、原則として自己負担なしで受けられます。 |
| 働けない期間の給料をカバー (休業給付) |
ケガや病気の療養のために仕事ができず、給料が出ない場合、およそ8割相当の金額が支給されます。 |
| 後遺症が残った場合 (障害給付) |
治療が終わっても体に障害が残ってしまった場合、その程度に合わせて「年金」や「一時金」が支払われます。 |
| 介護が必要になったら (介護給付) |
障害年金などを受けている方で、実際に介護を必要としている場合に、その費用が支給されます。 |
| 亡くなった場合の遺族へのサポート(遺族給付) | 亡くなった従業員の遺族に対して、生活を支えるための年金などが支給されます。 |
| 葬式の費用 (葬祭給付) |
亡くなった従業員の葬式を行う遺族などに対して、一定の金額が支給されます。 |
| 健診で異常が見つかったら (二次健康診断等給付) |
会社の健診で脳や心臓の数値に異常があった場合、再検査や保健指導を無料で受けることができます。 |
労災の認定基準「業務遂行性」と「業務起因性」とは

労災と認められるには「仕事中であること」と「仕事が原因であること」の両方を満たさなければなりません。出張中の災害が「業務災害」と認められるには、以下の2つの基準を満たす必要があります。
1. 業務遂行性(仕事中であること)
労働者が「事業主の支配下にある状態」で発生したかどうかを判断する基準です。
具体的には、以下の3つのパターンが「業務遂行性あり」とみなされます。
- オフィスや工場で働いているとき
- 休憩時間や始業前・終業後に会社内にいるとき
- 労外回り営業、配送中、出張中など
-
-
※出張中は、移動や宿泊も含めて「事業主の包括的な支配下」にあるため、広い範囲で業務遂行性が認められます。
-
2. 業務起因性(仕事が原因であること)
ケガや病気が「業務が原因で発生した」ことを指します。例えば、出張中の移動中に交通事故に遭った、あるいは宿泊先が火事になったといった事態は、業務に伴う危険が現実化したものとして認められます。逆に、業務とは無関係な個人的な持病の悪化などは認められません。
- 機械の操作ミスで指をケガした
- 社内の階段が壊れていて転倒した
- 猛暑の中、屋外作業を続けて熱中症になった
【事例紹介】労災と認められないケース
出張中であっても、すべての行動が労災保険の対象になるわけではありません。仕事の範囲を大きく外れ、「私的でプライベートな時間」とみなされた場合には、労災は認められません。具体的にどのようなケースが対象外になるのか、例を挙げて解説します。
(参考:公益財団法人 労災保険情報センター)
❌ 労災と認められないケース
- 1. 仕事の合間に観光をしていた場合
商談と商談の間の空き時間に、近くの有名な神社を参拝しに行き、階段で転んでケガをした。
● 対象にならない理由:
観光は仕事を行う上で必要な行為ではなく、完全に「個人の自由な楽しみ」の時間です。出張期間中であっても、業務と関係ない娯楽中の事故は、会社が責任を負う範囲外と判断されます。 - 2. 私的な寄り道をしていた場合
目的地へ向かう途中で、近くに住む友人の家に寄るために本来のルートを外れ、その寄り道先で交通事故に遭った。
● 対象にならない理由:
自分の都合で仕事のルートを外れた瞬間から、労災の守備範囲外となります。寄り道をしている間や、寄り道を終えて元のルートに戻るまでの間に起きた事故は、仕事とは無関係とみなされます。 - 3. 個人的な深酒でケガをした場合
一人で夕食をとった際、ついたくさんお酒を飲んで泥酔。ホテルに戻る途中の道で千鳥足になり、派手に転倒して骨折した。
● 対象にならない理由:
出張中の食事は労災の対象になりますが、限度を超えた飲酒は「個人の勝手な振る舞い」とみなされます。お酒が原因で注意力が著しく低下して起きた事故は、仕事の延長とは認められません。
監修者:勝間
労災になるかどうかの基準は、「その行動が仕事をするために必要だったか?」です。仕事相手との会食(接待)なら業務になりますが、個人の判断で行った観光や深酒は、たとえ出張先であってもプライベートとして扱われることを覚えておきましょう。
出張先で労災事故が発生した場合の手続きの流れ

出張先で労災事故が発生した場合、「どこの病院へ行けばいいのか」「書類はどうすればいいのか」と混乱しがちですが、基本的な流れは以下の通りです。「健康保険証を使わない」という点が最大の注意点となります。
出張者が行うこと
① 病院へ行き「労災」と伝える
- 健康保険証は提示しないでください。
- 受付で「仕事中のケガ(労災)です」と伝えます。
- 労災指定病院であれば、窓口での支払いは不要です。
- 指定外の病院(近所のクリニック等)の場合は、一旦全額(10割)を自己負担し、後で給付を受ける形になります。
② 会社へ連絡する
- 「いつ・どこで・何をしていて・どのような状況で」負傷したかを報告します。
- 出張中であれば、予定していた業務の調整も併せて相談します。
管理部門が行うこと
① 被災状況の聞き取りと記録
- 本人や目撃者から詳細を聞き取り、正確な事実関係を記録します。
- これは後の申請書類や、労働基準監督署への報告に不可欠な情報となります。
② 労働基準監督署への届出・申請
- 4日以上の休業を伴う場合は、遅滞なく「労働者死傷病報告」を提出します。
- 受診した病院の形態(指定・指定外)に合わせた請求書類を作成し、手続きをサポートします。
海外出張における労災適用の注意点
海外出張であっても日本の労災保険が適用されるのが基本ですが、勤務の形態によっては適用外となる場合があります。
労災基準の違い「海外出張」と「海外派遣」
海外出張と海外派遣は、どちらも「海外で働く」ことには変わりありませんが、「日本の労災保険が適用されるかどうか」という点において、決定的な違いがあります。特に「海外派遣」に該当する場合、別途「特別加入」の手続きを行っていないと、日本の労災保険は使えません。
| 区分 | 定義 | 労災保険の適用 |
|---|---|---|
| 海外出張 | 日本の事業所に所属したまま、その事業所の指示で一時的に海外へ行くこと(商談、会議、研修等) | 適用される |
| 海外派遣 | 海外にある現地法人や支店、提携先などに出向・転勤し、現地の指揮命令に従って働くこと | 原則適用外 (特別加入が必要) |
海外出張先で労災事故が発生した場合の手続きの流れ
海外では日本の労災指定病院が存在しないため、現地の医療機関では「一旦全額を自費で支払い、後日日本で還付を受ける」手続きが基本となります。また、海外派遣者の場合は日本の労災保険に「特別加入」していることが給付の条件となります。
出張者が行うこと
① 現地の医療機関で受診し、実費を支払う
- 日本の健康保険証や労災の様式は使えません。一旦、現地通貨またはクレジットカードで全額支払います。
- 海外旅行保険に加入している場合は、保険会社のサポートデスクに連絡し、提携病院や支払い方法の指示を仰ぎます。
② 必要な証拠書類を必ず持ち帰る
- 領収書(原本): 支払い金額が証明できるもの。
- 診療明細書・診断書: どのような治療を受けたか、病名やケガの部位がわかる書類。
- これらがないと、帰国後に労災申請(還付請求)ができません。
③ 会社へ速やかに連絡する
- 事故の状況を報告し、治療が長引く場合や帰国が困難な場合の指示を受けます。
管理部門が行うこと
① 契約形態と加入状況の確認
- 当該社員が「海外出張」か「海外派遣」かを確認します。
- 海外派遣の場合、事前に「労災保険特別加入」の手続きが完了しているかをチェックします。
② 帰国後の還付申請手続き(療養費請求)
- 本人が持ち帰った領収書や診断書を元に、労働基準監督署へ請求書(様式第7号など)を提出します。
- 外国語の書類には、日本語の翻訳文を添付する必要があります。
監修者:勝間
海外での医療費は驚くほど高額になるケースがあります。労災保険は後日還付されますが、病院窓口での支払いが困難な場合に備え、海外旅行保険に加入しておきましょう。保険会社によってはキャッシュレスで診療が可能です。
労災申請に必要な書類と入手方法
申請には指定の様式が必要です。以下のリンクからダウンロードできます。
※病院によって提出する号数(5号、7号など)が異なるため、受診先に確認が必要です。
労災申請の手順と流れ
一般的な申請のステップは以下の通りです。詳細は以下のガイドラインも併せてご確認ください。
- 指定病院での受診:労災指定病院であれば、窓口での支払いは不要です。
- 請求書の作成:事業主の署名・捺印をもらい、必要事項を記入します。
- 労働基準監督署への提出:基本的には病院を経由、または会社が提出します。
- 調査と支給:労基署が「業務災害」と認めれば、給付が行われます。
会社が取り組むべき3つの対策
出張中のトラブルは、従業員の安全に関わるだけでなく、企業にとっても慎重に扱うべき事案です。万が一の際に迅速に従業員を救護するためには、以下の3つの対策をしておくことをおすすめします。
① 出張旅費規程の整備
出張の定義や移動経路、宿泊のルールを明確に定めておきましょう。ルールが明記されていれば、労災申請時に「業務遂行性」をスムーズに証明できます。
② 緊急連絡網の構築
深夜や休日、あるいは海外であっても、異常事態が発生した際に迷わず報告・相談ができる緊急連絡網を確立しておく必要があります。
③ 出張管理システムの活用
「誰が・いつ・どこにいるか」をリアルタイムで把握できる仕組みを作ります。手動の管理では限界があるため、デジタルツールで一元管理するのが最も確実です。
従業員が個々にチケットや宿泊先を手配している場合、管理部門が出張の内容を把握するのは大変です。そこで、多くの企業が導入を進めているのが、出張予約を一元管理できる「出張管理システム(BTM)」です。
システムを通じた予約をすれば、いざという時の所在把握も瞬時に可能になります。リスク管理をスマートに強化したい企業にとっておすすめの効率的な管理方法です。
監修者:勝間
労災が発生した際、会社側が「従業員がどのような経路で移動していたか」を即座に証明できることは、会社を守ることにも繋がります。出張管理システムを活用すれば、予約データがそのまま証拠となるため、煩雑な確認作業を大幅にカットできます。
「出張管理」を簡単にする
ピカパカ出張DX
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